タイメックス「アイアンマン 8ラップ メタル」を実機レビューする。

本作は、タイメックスを代表するデジタルスポーツウォッチコレクション、「アイアンマン」に属する2024年新作であり、ステンレススティール製の高級感あるケースをまとっている。

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ステンレススティール製のケースを採用した2024年新作。オールブラックのカラーリングがクールな印象をもたらす。クォーツ。SSケース(直径39mm)。100m防水。5万8300円(税込み)。

今回レビューを行うのは、タイメックスの「アイアンマン 8ラップ メタル」だ。本作は、タイメックスを代表するデジタルウォッチのひとつ、「アイアンマン 8ラップ」のデザインを受け継いだ、2024年新作である。

オリジナルは1986年に誕生し、パネライ時計コピー 代引き発売初年度に40万本を売り上げ、スポーツウォッチの金字塔とまで呼ばれた存在だ。アメリカの第42代大統領を務めたビル・クリントンが愛用していたことや、同シリーズの時計をNASAの宇宙飛行士が宇宙へ携行したことなど、数多くの逸話を持つことでも知られている。

タイメックスは、そのルーツを1854年にさかのぼるアメリカの時計ブランド。長い歴史から、たった1ドルのポケットウォッチ「ヤンキー」や、1933年の「ミッキーマウス・ウォッチ」など、多くの名作を世に送り出してきたが、タイメックスと言えばアイアンマンを思い浮かべる方も少なくないのではないだろうか。

オリジナルを知る人にとっては懐かしく、また知らない人にとっては新鮮味すら感じるアイアンマン。現代の新作として登場したアイアンマン 8ラップ メタルは、どのような時計なのだろうか。本作にはゴールド、シルバー、ブラックの3種類のカラーバリエーションが存在しているが、今回はブラックカラーのモデルを取り上げてみたい。

本作は、ベゼルやケース、ベルトやボタンまで、オールブラックで統一したクールなカラーリングが魅力だ。アイアンマンと言えば樹脂製ケースの印象があるが、本作の場合は頑強なステンレススティール製。ただ単に素材を変更するだけではなく、十分な防水性を確保するために金型を新規に作り直し、ケースバックの構造も改めているとのこと。見た目の高級感が格段に向上しているのはもちろん、本作に対するタイメックスの熱意が感じられる。

オールブラックとはいえ、仕上げを変えることで表情にメリハリをつけているため、眺めているだけでも楽しめる。ベゼルは艶消し、ミドルケースやベゼルを固定するネジは艶のある仕上げとすることで、立体感を高めている。ケースはエッジがやや落とされ、ほのかに柔らかな印象だ。筆者の個人的なイメージでは、多色のカラーリングこそアイアンマンらしさを特徴づけるものと考えていたが、本作を見てその考えは霧散した。

フロントに配されたふたつのボタンによって、クロノグラフの操作性を高めている。液晶は明るく見やすい。

では、アイアンマンらしさを感じさせるものは何だろうかというと、ネジ留めされたベゼルに配されたふたつのボタンではないだろうか。これは、主にクロノグラフ機能でのスタート、ストップ、ラップ、リセットなどの操作を行う際に用いるものである。着用した状態で押しやすい位置に配されたボタンは、アイアンマンのスポーツウォッチとしてのキャラクターを象徴する意匠だ。

そのほか、ケースサイドの2時位置にはライト点灯用、4時位置には時刻やカレンダーを修正する際に用いるセット用、8時位置にはモード切り替え用のボタンが配されている。使用頻度の高いボタンは押しやすく、反対に誤作動が重大な影響を及ぼすセット用のボタンは、小さく押しにくくされている。

ケースバックは地の色のステンレススティール製。ロゴやスペックに関わるテキストが刻まれている。四隅にマイナスネジを配し、ミドルケースに固定されている。

ケースバックもステンレススティール製。中央にはスペックなどのテキストが刻まれ、四隅にはミドルケースに固定するためのマイナスネジが配されている。

 ベルトは、ケースと同じくステンレススティールをブラックで仕上げたもの。7連タイプだが、両端をマットに、中央を艶のある仕上げとすることで表情を付けられている。ベルトのつくりは至って簡素だ。板を丸く折り曲げたようなコマで構成された、いわゆる“巻ブレス”である。ただし腕回りの調整はコマの抜き差しによるものではなく、ベルトの中腹に取り付けられた金具の位置をスライドさせて行うスライド式。マイナスドライバーなどで金具のロックを外し、任意の位置にスライドさせた後にロックを押し込んで固定するだけだ。調整自体が簡単であることに加え、無段階で調整できるため、腕回りにも合わせやすい。ちなみに、ゴールドカラーケースのモデルとシルバーカラーケースのモデルには、ステンレススティールではなくラバー製のストラップが装着されている。

ケースと同じく、艶の有無によってメリハリを利かせたブレスレット。クラスプにはブランドロゴが刻まれている。

多機能ゆえになかなか操作が複雑なデジタルウォッチ。それは本作であっても例外ではない。ボタンが多い分、慣れれば使いやすいが、初見で扱いこなすことは困難だろう。

本作には通常の時刻表示のほか、クロノグラフとカウントダウンタイマー、アラームの3つのモードが備わっている。各モードは8時位置のボタンを押下するごとに切り替わり、液晶に“CHRONO”、“TIMER”、“ALARM”の文字が順に表示される。説明書を確認しながら何回か操作をすれば、おおよその使い方はマスターできるはずだ。特にクロノグラフは、簡単にラップタイムを計測できるため、さまざまなものを計って楽しむことができる。

時刻やカレンダーの調整をする際には、4時位置のボタンを長押しする必要がある。長押しのため、誤って触れてしまって気付かぬうちに時刻調整が開始されているということも発生しないだろう。

本作のケースは直径39mmだが、腕に載せるとそれよりも小さな印象を受ける。恐らくケースに対してダイアルが小さく見えるためだろう。アナログウォッチでは大抵、円形のダイアルにインデックスと針が並び、視認性を確保するためにもある程度の面積を要する。しかしデジタルウォッチである本作では、長方形の液晶が実質的なダイアルであり、面積で考えればアナログウォッチよりもだいぶ小さくなる。

コンパクトなケースは、日常使いだけではなく、スポーツシーンでも活躍する。ブレスレットウォッチを着けて走ると腕元で時計が暴れて気になるが、腕回りぴったりに調整しやすく軽量な本作であればそれほど気にならない。もっとも、スポーツシーンでの着用をメインとするのであれば、ラバーストラップに変更したほうがさらに良いだろう。

ボタンの操作性も十分だ。2時位置や8時位置のボタンは、中央をわずかに窪ませることで、指で押し込んだ際に滑りにくくしている。

腕に装着する際の注意点としては、スライド式ブレスレットに慣れる必要があるということくらいだろう。三つ折れ式ブレスレットはクラスプを解放しても輪が解かれることはないが、スライド式はクラスプを解放した時点でブレスレットの6時側と12時側に分離される。そのため、ピンバックルの付いたレザーストラップと同様、片手でサッと装着することが難しいのだ。

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2022年に登場した「ムーンスウォッチ」。

2024年には定番、限定問わずさまざまなバリエーションのモデルが登場し、コレクションはますます拡大を続けている。オメガスーパーコピー代引き安心そんなムーンスウォッチのランキングを、『ウォッチタイム』ドイツ版編集長、ダニエラ・プッシュが作成した。2024年発表モデルを、この記事で振り返ろう。

2024年に発表された「ムーンスウォッチ」ランキング

 スウォッチとオメガのコラボレーションであるバイオセラミック製「ムーンスウォッチ」は、時計の世界に長く続く足跡を残し、これまでにない反響を得た。このアイコニックなモデルはスウォッチとオメガの市場を活性化しただけでなく、腕時計そのものを一般の人々の目を向けることに成功したのだ。

 2022年3月の発表以来、11のカラフルなカラーバリエーション、もしくはミッション(ひとつのカラーが太陽系惑星と月、冥王星、そして太陽と対応している)から始まったコレクションは現在も拡大中だ。限定モデル、定番モデル等その売り出し方も多彩である。

 このランキングでは、デザイン、革新性、技術的な洗練、各モデルの文化的な影響力という観点から、現代の時計製作を再定義まで果たしたムーンスウォッチのコレクションを振り返っていこう。

【7位】「ムーンスウォッチ ミッション オン アース ラバ」

 2024年6月に3種発表された「ミッション オン アース」コレクションのうちのひとつ。宇宙的な視点から、地球の自然を象徴的に表現したコレクションである。

 火山と溶岩流にインスパイアされた激しい印象を覚えるクロノグラフは、ダークオレンジのバイオセラミック製の直径42mmもケースとブラックのベロクロストラップ、そして蓄光塗料によるディティールが魅力的なモデルだ。

 アイコニックなオメガの「スピードマスター “ウルトラマン” リミテッド エディション」や、「スピードマスター アラスカプロジェクト」の意匠を反映したと思わせるモデルでもあるのだ。

 コレクションのすべてのモデルは、オメガxスウォッチのブランディング、「スピードマスター」とムーンスウォッチのロゴ、バイオ製素材の風防、蓄光塗料の塗布、くぼんだサブダイアルが配された文字盤を備えたものだ。

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クォーツ。バイオセラミックケース(直径42mm、厚さ13.25mm)。30m防水。4万700円(税込み)。

【6位】「ムーンスウォッチ ミッション オン アース ポーラーライツ」

ミッション オン アースコレクションの2本目。ターコイズカラーのこの腕時計は、地球上の北方できらめく光を表現するクロノグラフだ。そのディープブルーの文字盤は、アヴェンチュリンをイメージしたシルバーカラーの粒子がかがやいている。その表情はひとつとして同じものはない。ターコイズの針はこの文字盤上において、印象的なコントラストを作り上げ、デザイン上のよいチャームポイントとなっているだろう。

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クォーツ。バイオセラミックケース(直径42mm、厚さ13.25mm)。30m防水。4万700円(税込み)。

【5位】「ムーンスウォッチ ミッション オン アース デザート」

 ミッション オン アースコレクション最後の3本目は、地球の表面の約5分の1を占める、果てしなく広がる砂漠にインスパイアされたものだ。さりげないグレーベージュトーンはこの腕時計全体をよく調和している。ミッション オン アースコレクションはどれも4万700円(税込み)だ。

オメガ×スウォッチ「ムーンスウォッチ ミッション オン アース デザート」Ref.SO33T103
クォーツ。バイオセラミックケース(直径42mm、厚さ13.25mm)。30m防水。4万700円(税込み)。

【4位】「ムーンスウォッチ ミッション トゥ スーパー ブルー ムーンフェイズ」

 夏季と2024年8月19日のブルームーンを祝って製作されたモデル。ブルーのバイオセラミックス製のケースは、ブルーのステッチがほどこされた同色系のベロクロスストラップによって補完されている。なお、ストラップの遊環も、同じくブルーのバイオセラミックス製だ。

 文字盤はブルーカラーとシルバーオパーリンの“パンダ”仕様であり、針はブルー、アワーインデックスはスカイブルーである。

 ハイライトはブルーのバイオセラミック製ベゼル上のパルスメーターで、ムーンスウォッチの中では唯一となる。ふたつの大きな月は、2時位置のサブダイアルにあるダークブルーのディスク上で回転し、月の一部のディテールは紫外線下で発光するのだ。バッテリーカバーはブルーの濃淡で表現された月があしらわれたものである。2024年8月1日から8月20日までのあいだに、4万6200円(税込み)で販売されていた。

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クォーツ。バイオセラミックケース(直径42mm、厚さ13.75mm)。販売終了。

【3位】「ムーンスウォッチ ミッション トゥ ザ ムーンフェイズ ニュームーン」

 スヌーピーとのコラボレーションモデルの新作である「ミッション トゥ ザ ムーンフェイズ ニュームーン」は、ケースも文字盤もストラップも、ブラックを採用した印象的なデザインである。クロノグラフ秒針、サブダイアル中の針、タキメータースケールはホワイトカラーであり、文字盤とのあいだにコントラストを生み出すよいアクセントだ。

 2時位置のムーンフェイズは、NASAのマスコットにも採用された、スヌーピーのイラストが配されたもの。紫外線を当てると、漫画『ピーナッツ』からより抜いた、スヌーピーのセリフが表示される仕掛けが施されている。この腕時計のチャームポイントといえるだろう。

オメガ×スウォッチ「ムーンスウォッチ ミッション トゥ ザ ムーンフェイズ ニュームーン」Ref.SO33B700
クォーツ。バイオセラミックス(直径42mm、厚さ13.75mm)。4万6200円(税込み)。

【2位】「ムーンスウォッチ ミッション トゥ ムーンフェイズ フルムーン」

 スヌーピーとのコラボレーションモデルに関するうわさや“匂わせ”は、発表の数ヶ月前からわき起こっていた。そして2024年3月に「ミッション トゥ ムーンフェイズ フルムーン」が発表されるやいなや、一大センセーションを巻き起こした。限定モデルではない、このピュアホワイトの腕時計は、その外観で多くの人を魅了。ホワイト文字盤に対するブラックの針やタキメータースケールとのコントラスト、バイオセラミックス製のケース、リュウズ、プッシャー、そしてホワイトのベロクロストラップが、この腕時計のデザインを個性的なものとしているのだ。

 オールブラックのモデルと同様、2時位置のスヌーピーが配されたムーンフェイズは、この腕時計のハイライトである。紫外線をあてるとスヌーピーのセリフが浮かび上がる仕掛けも同様だ。

スウォッチ「ムーンスウォッチ ミッション トゥ ムーンフェイズ フルムーン」Ref.SO33W700
クォーツ。バイオセラミックケース(直径42mm、厚さ13.75mm)。4万6200円(税込み)。

【1位】「ムーンスウォッチ ミッション トゥ アースフェイズ」

 2025年最後にリリースされたこのモデルは、粒状の質感でグレーカラーの月面を思わせる文字盤が印象的な腕時計である。エレガントな印象のブラックのベゼルは、ライトグレーでマーキングがされたタキメータースケールが、そのデザインを補完している。特に際立つのは、2時位置にあるふたつの月による、ムーンフェイズ。そして9時位置にあるアースフェイズだ。

オメガ×スウォッチ「ムーンスウォッチ ミッション トゥ アースフェイズ」Ref.SO33M700
クォーツ。バイオセラミックケース(直径42mm、厚さ13.25mm)。3気圧防水。4万7300円(税込み)。

シチズン「エコ・ドライブ」メンズモデル5本も紹介

シチズンの「エコ・ドライブ」は、太陽光や室内光など、あらゆる光をエネルギーに変換して時計を駆動させる画期的な技術である。この技術によって電池交換の手間が不要となり、環境負荷を軽減しながら利便性を提供する。本記事ではエコ・ドライブの仕組みや歴史、おすすめのメンズモデルを紹介しながら、この技術の魅力を明らかにする。

シチズンの「エコ・ドライブ」とは

 シチズン「エコ・ドライブ」は、光をエネルギーに変換し、電池交換を不要とした独自の光発電技術である。1976年に世界初のアナログ式光発電モデルを発表後、改良が重ねられ、室内灯のわずかな光でも発電する仕組みを確立した。

 以降では、エコ・ドライブの仕組みや進化の歴史についてより詳しく解説する。

シチズン独自の光発電技術「エコ・ドライブ」

 エコ・ドライブはソーラーセルで受光した光を電気に替え、内蔵の二次電池へ蓄えられた電気によって時計を駆動させる仕組みである。

 太陽光のみならず、オフィスの蛍光灯や自宅の照明など室内光でも発電可能だ。定期的な電池交換が不要なため廃棄電池を減らすことができ、環境にも優しい。

 スーパーコピー 代引きさらに、パワーセーブ機能によって暗所でも数カ月以上駆動するため、引き出しにしまっておいても止まりにくいのは、日常での使用における大きなメリットだ。

エコ・ドライブの仕組み

 エコ・ドライブは、文字盤の裏面に配置したソーラーセルが光を受けることで発電し、そのエネルギーを二次電池に蓄える。

 二次電池は繰り返し充放電が可能で、従来の使い捨て電池と異なり廃棄が大幅に減らせる。

 さらに、満充電状態では数カ月〜半年以上駆動でき、パワーセーブ機能によって光が当たらない状況でも性能を維持する。その結果、電池切れを気にすることなく、日常的に着用できるようになっている。

 また、防水性や耐衝撃性を備えるモデルも多く、ビジネス、カジュアル、アウトドアなど多様なライフスタイルに対応。こうした実用性の高さが支持を得ている理由だ。

エコ・ドライブの歴史と進化

 シチズンの光発電技術は、1976年に発表した世界初のアナログ式太陽電池時計「クリストロン ソーラーセル」から始まり、その後も進化を続けている。エコ・ドライブがどのような歴史をたどり、そして今日に至るのか、その歴史と進化を振り返ってみよう。

世界初の光発電時計の登場

1976年に発売された世界初のアナログ式太陽電池時計「クリストロン ソーラーセル」。文字盤に単結晶シリコン太陽電池8枚を備え、銀電池を二次電池として充電する方式が取り入れられた。

 1976年、シチズンは「クリストロン ソーラーセル」を発表。これは世界初のアナログ式光発電時計として大きな話題を呼んだ。

 当時、電池交換はユーザーにとって定期的な負担だったが、このモデルは太陽光を電力に変換し、クォーツムーブメントを駆動させる仕組みを採用しており、電池交換を不要にするという新たな価値を市場に提示した。

 クリストロン ソーラーセルは日常のメンテナンスを減らし、さらに電池廃棄が抑えられる環境配慮型製品として評価された。

 この成功はシチズンが持続可能性と利便性を両立する製品開発へと歩を進めるきっかけとなり、その後のエコ・ドライブ技術の発展と普及を導く原動力となった。

より効率よく、より薄く進化

1995年に発売された「アテッサ エコ・ドライブ」。初めてエコ・ドライブの名を冠したモデルで、フル充電時約6カ月の駆動時間を実現した。

 初期モデルでは駆動時間や発電効率に課題があったが、技術改良を重ねることで光発電技術は大幅に進化した。

 1980年代には連続駆動時間を延ばし、1995年にはエコ・ドライブ ブランドが誕生。消費電力低減やムーブメントの小型化によって、薄型モデルの開発も可能となった。

 また同年に発表された「アテッサ エコ・ドライブ」は約6カ月の駆動時間を実現するなど、日常での使い勝手も向上した。こうした過程を経て、エコ・ドライブは機能性、デザイン、環境への配慮を備えた、多様なニーズに応える時計として支持を得るに至った。

基幹技術として数々のモデルに採用

 現在、エコ・ドライブはシチズンの中核技術として幅広いモデルに搭載されている。

 高精度を追求した「ザ・シチズン」、超薄型化を極めた「エコ・ドライブ ワン」、シチズンの技術を結集させた最高級ブランドの「カンパノラ」、そしてビジネスシーンで有用な「アテッサ」や高い機能性を備える「プロマスター」など、用途やスタイルに応じて幅広い選択肢から選べるようになっている。

 1996年には「エコマーク」も取得し、持続可能な製品として評価されている。このようにエコ・ドライブは、環境負荷の低減と利便性を両立する基幹技術として、シチズンのブランド価値を体現している。

エコ・ドライブ搭載のおすすめモデル

 エコ・ドライブを活用したモデルは実に多彩で、それぞれが異なる個性を持つ。その中でも特に注目すべき5つのブランドと、メンズモデルを紹介する。

ザ・シチズン「AQ4091-56M」

ザ・シチズン「AQ4091-56M」
光発電エコ・ドライブ(Cal.A060)。フル充電時約1.5年駆動(パワーセーブ時)。スーパーチタニウムケース(直径40mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。44万円(税込み)。

ザ・シチズンは、1995年に誕生したブランドだ。高精度なムーブメントと洗練されたデザインを特徴とし、時計愛好家から高い評価を受けている。

「AQ4091-56M」はザ・シチズンにラインナップされるモデルのひとつで、高精度と高級感を両立している

 年差±5秒のエコ・ドライブを搭載し、定期的な電池交換が不要としながら、常に正確な時刻をキープできる。

 素材には軽量で錆びにくいスーパーチタニウムを採用し、デュラテクトプラチナ加工で傷にも強い。

 文字盤には藍染が施された土佐和紙を使い、深みのある風合いを演出。

 クラリティ・コーティング処理を施したデュアル球面サファイアガラスで視認性を高め、JIS1種耐磁性能や針自動補正機能を備えるパーフェックスも搭載。日常からビジネスまで心強い相棒となる。

「エコ・ドライブ ワン AR5060-58E」

シチズン「エコ・ドライブ ワン AR5060-58E」
光発電エコ・ドライブ(Cal.8826)。フル充電時約1年駆動。SSケース(直径38mm、厚さ3.88mm)。5気圧防水。44万円(税込み)。

 エコ・ドライブ ワンは、世界最薄1.00mmの光発電ムーブメントを搭載したプレミアムウォッチブランドである。

 シンプルで洗練されたデザインと卓越した技術力を融合しており、特にサーメット製のベゼルが薄さと強度を両立している。

 中でも外装にスーパーチタニウムを採用したモデルは軽量で肌に優しく、耐傷性にも優れている。また、すべてのモデルは太陽光や室内光を電力に変換するエコ・ドライブ技術により、定期的な電池交換が不要で、光のない環境でも長時間駆動する。

「AR5060-58E」は、世界最薄1.00mmムーブメントを搭載するエコ・ドライブ ワンの代表モデルといえるだろう。

 ケース厚わずか3.88mmの超薄型設計が手首に軽やかなフィット感をもたらし、スーツスタイルはもちろん、カジュアルウェアにも自然に調和する。

 光発電技術により電池交換不要で、5気圧防水によって日常生活での水仕事や急な雨にも対応。シンプルで洗練された文字盤は時刻の判読性にも優れるなど、機能美と快適性を求めるユーザーに最適な1本だ。

カンパノラ「宙鏡(そらかがみ) BU0020-20L」

カンパノラ「宙鏡(そらかがみ) BU0020-20L」
光発電エコ・ドライブ(Cal.8730)。フル充電時約6カ月駆動。SSケース(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活用防水。38万5000円(税込み)。

 カンパノラは、卓越した技術と日本の美意識を融合させた高級腕時計ブランドである。独創的なデザインと複雑な機構が特徴で、時を愉しむための特別な体験を提供する。

 スイスのラ・ジュー・ペレ社の熟練時計師が組み上げた機械式ムーブメントを搭載し、日本の伝統工芸技法を駆使した文字盤を備えるモデルもラインナップされるなど、シチズンの技術力とセンスが堪能できる点でも高い支持を得ている。

「宙鏡(そらかがみ) BU0020-20L」は日本の伝統技術と先端技術が融合した、カンパノラのエコ・ドライブ モデルだ。

 6時位置のインダイアルには漆と金属粉を用いることで、広大な宇宙で星が瞬く様子を表現。リングソーラーセルにより、エコ・ドライブを搭載しながら文字盤の繊細な表現が楽しめるようになっている。

 トリプルカレンダーやムーンフェイズ搭載で機能性も高く、フル充電で約6カ月駆動する。

 ステンレススティールケースとワニ革バンドは高級感と耐久性を両立。無反射コーティングサファイアガラスで視認性も確保するなど、実用性も十分な仕上がりだ。

シチズン アテッサ「ACT Line/ブラックチタンシリーズ CC4059-64L」

シチズン アテッサ「ACT Line/ブラックチタンシリーズ CC4059-64L」
光発電エコ・ドライブ(Cal.F950)。フル充電時約5年駆動(パワーセーブ時)。スーパーチタニウムケース(直径44.6mm、厚さ15.4mm)。10気圧防水。33万円(税込み)。

 アテッサは、軽量で強度の高い「スーパーチタニウム」を使用した、洗練されたデザインを特徴とするブランドである。

 ビジネスからカジュアルまで幅広く対応し、エコ・ドライブやGPS衛星電波受信機能など先進技術を搭載。特に「ブラックチタン」や「ACT Line」などが人気で、耐久性と機能性を両立している。

「CC4059-64L」はアテッサにラインナップされるGPS衛星電波受信搭載モデルだ。世界各地で正確な時刻とカレンダーを自動受信し、渡航時における時差調整の手間を省く。

 素材には軽量で耐久性に優れるスーパーチタニウムを使用し、デュラテクトDLC加工を施すことで傷に強い。

 青紫色のサファイアベゼルとストライプ模様の文字盤が上質感を演出し、さらに10気圧の防水性能や独自技術のパーフェックスにより磁器や衝撃による針のズレも防ぐ。

 クラリティ・コーティング処理を施したサファイアガラスで視認性も高く、ビジネスからレジャーまで幅広いシーンで頼れる存在となる。

シチズン プロマスター「BN0231-01L」

シチズン プロマスター「BN0231-01L」
光発電エコ・ドライブ(Cal.E168)。フル充電時約6カ月駆動。SSケース(直径46mm、厚さ14.6mm)。200m防水。6万6000円(税込み)。

 プロマスターは「MARINE」「LAND」「SKY」の3つのカテゴリーに分かれており、その名の通り陸海空の各分野で専門的な機能と高い信頼性を提供するプロフェッショナル向けのブランドだ。

 プロマスター「NB6021-17E」は、アウトドア派に最適なモデルであり、優れた耐久性と防水性能を備えている。

 ISO 6425規格に準拠した200m潜水用防水性能を持ち、プロフェッショナルなダイビングから過酷な環境での使用にも対応可能である。

 流線型のフォルムをはじめ、12時位置と奇数時のインデックスやウレタン製のストラップはオルカ(シャチ)をモチーフとしたデザインを取り入れ、個性的かつ存在感のあるルックスに仕上げている。

40代の男性に向けて、IWCをエンジニア出身の時計ライター

今回は、有名なトップガンとの共同開発モデルも並ぶ「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ」や、耐磁性能を備えた名作で知られる「インヂュニア」、独自のベゼル構造を備えた「アクアタイマー」など、“技術屋”のイメージを持つ時計ファンも多いIWCに注目しよう。エンジニアとしてのバックボーンを持ち、IWCファンで、40代に突入したばかりの筆者が、40代男性に向けてお勧めするIWCのモデルを紹介する。

IWCの歴史と魅力

IWCスーパーコピー代引き 優良サイト、1868年に時計職人のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによりスイスのシャフハウゼンにて創業された。フロレンタインの狙いは、アメリカの先端技術と当時まだ賃金が安かったスイスの労働力を結び付け、アメリカ市場向けの高品質なムーブメントと時計部品を製造することにあった。また、スイス時計産業の中心地から離れたドイツ語圏のシャフハウゼンを選んだ理由は、時計作りの伝統が根付いていたことに加えて、19世紀に始まったライン川の水力発電によって安定供給される電力を活用した製造技術の導入が可能であったからとされる。すなわち、伝統的な時計技術をベースとしつつ、創業当初から機械化による製造の効率化が図られていた点が、IWCの特徴のひとつだ。

 IWCは、高い耐磁性能を備えたモデルの量産化、量産性と信頼性を両立した手巻きムーブメントの開発、現在でも基本設計が流用される高効率な自動巻き機構の開発、量産を前提とした永久カレンダー搭載ムーブメントの開発、チタンやセラミックス製ケースの採用などを実現してきた。いずれも工業的なアプローチによる“量産”を実現していることがポイントで、IWCに“技術屋”のイメージを持つ時計ファンも多い。

40代男性に向けたIWCのお勧めモデル

一般的に、40代前半に役職や役割の転換期が訪れる。筆者がまさにその最中にあり、より大きなチームを任される方や、重要なプロジェクトのリーダーとなる方、実績を積んで独立、あるいは経営する会社の発展のタイミングという方も多いのではないだろうか。そのような節目に、その先の自身を支える1本、あるいは成功の記念となる1本を選ぶというのも良いだろう。

そこで今回は、技術力に定評のあるIWCが擁するコレクションの中から、40代男性に向けてお勧めモデルを紹介してゆこう。

「ポートフィノ・コンプリート・カレンダー」Ref.IW359001

IWC「ポートフィノ・コンプリート・カレンダー」Ref.IW359001
自動巻き(Cal.32150)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。158万4000円(税込み)。

IWCの中で最もドレッシーなコレクションが「ポートフィノ」である。北イタリアに位置し、風光明媚な景観からリゾート地として知られる港町のポートフィノに因んだモデル名である。それを反映してか、質実剛健なツールウォッチのイメージの強いIWCの中でポートフィノは、シンプルかつエレガントなドレスウォッチコレクションとして人気を集めている。

今回取り上げるのは「ポートフィノ・コンプリート・カレンダー」だ。本作の文字盤6時位置には、同軸による月表示と日表示を備え、12時位置にも同軸による曜日表示とムーンフェイズ表示を備える。本作の選定理由は、このような多機能をポートフィノのエレガントなスタイリングにまとめている点に加えて、これまでのIWCの歩みとの関りを感じさせるモデルである点である。そこでIWCの歴史を少しひもとこう。

1970年代後半に経営面で苦境に立たされていたIWCは、技術的資産を活用しながらラインナップを拡充する試みの中で、懐中時計用ムーブメントを多機能化して腕時計に仕立てることを発案し、懐中時計を思わせるラウンドケースに細身のラグを取り付けたモデルをリリースする。そのデザインをベースに小型化や薄型化が図られ、後に人気コレクションへと成長することになる。これが現在のポートフィノの基礎を築くこととなった。

1984年に誕生した「ポートフィノ」。その後アップデートが加えられ、さまざまなモデルが製造されるが、エレガントなスタイルは現行モデルにも引き継がれている。

ほぼ同時期にプレス技術や各種加工技術が向上し、手作業に頼るほかなかった精密な部品の製造について、形状の制約はあるものの量産化することが可能となりつつあった。これを受けて、IWCの技術者であるクルト・クラウスは、高精度なムーンフェイズ表示を備える永久カレンダー機構を、プレス部品の採用を前提に開発し、手に取りやすい価格でリリースすることに成功。これは、後年の時計技術に大きな影響を与えた。

では、本作に話を戻そう。本作は、ラウンドケースと細身のラグというポートフィノのアイコニックなスタイリングを継承し、搭載される自動巻きムーブメントCal.32150は永久カレンダーに加えて、高精度ムーンフェイズ表示を実現している。IWCの歴史に紐付いたシルエットと機構を搭載した本作は、IWCを深く知れば知るほど魅力を再認識できる、味わい深いモデルと言えるだろう。長きに渡って付き合う1本を選ぶのならば、候補に入れていただきたいモデルだ。

「ポルトギーゼ・クロノグラフ」Ref.IW371605

IWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ」Ref.IW371605
自動巻き(Cal.69355)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ13.0mm)。3気圧防水。123万7500円(税込み)。

「ポルトギーゼ」は、1930年代にポルトガルの商人による「マリンクロノメーター級の高精度な腕時計が欲しい」という要望に応えるモデルとして誕生した。高精度の実現のために懐中時計用ムーブメントを採用したことで、腕時計としては大型のケースに、懐中時計やマリンクロノメーターを思わせるアラビックインデックスが組み合わされ、これが今日までデザインコードとして引き継がれている。そして、かつては超大型の特殊時計といった趣であったが、現在では時計デザインの大型化によって広く受け入れられ、人気コレクションとして親しまれている。

1939年製造と言われている、オリジナルの「ポルトギーゼ」Ref.325。

今回取り上げるのは、クロノグラフを付加した「ポルトギーゼ・クロノグラフ」だ。ケース径41mmの特徴的な大きいサイズ感と、ケースいっぱいまで確保された文字盤がポルトギーゼらしさを生み出すポイントである。本作は、シルバーの文字盤にブルーの各針とアラビア数字インデックスが爽やかな印象で、カラーコーディネートに合わせてネイビーのレザーストラップが組み合わされる。6時位置にスモールセコンド、12時位置に30分積算計を備え、各インダイアルでインデックスが“見切れている”のが、懐中時計を思わせるディティールである。文字盤の見返し部には細かな秒スケールが刻まれ、正確な測時をサポートしてくれる。

一般的にクロノグラフモデルは、航空機パイロット向けやモータースポーツ用途を想定したツールウォッチらしいデザインが多い中で、ポルトギーゼ・クロノグラフは懐中時計を思わせるエレガントなデザインが特徴だ。このようなエレガントさのあるモデルであればスーツスタイルには好適で、やや改まったビジネスシーンにもあなたをサポートしてくれることだろう。

「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ」Ref.IW388101

IWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ」Ref.IW388101
自動巻き(Cal.69385)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。105万2700円(税込み)。

 IWCは、古くはドイツ軍およびイギリス軍に空軍向けモデルを提供してきた歴史を持ち、2007年以降はアメリカ海軍の戦闘機戦術教育特別コース、通称“トップガン”(映画で有名な“あの”トップガンである)と協力関係にある。また、2018年以降はトップガン教官と共同でパイロットウォッチの開発を行っており、過酷な戦闘機のコックピット内でも正確かつ確実に機能する信頼性を実現するIWCの技術力が認められ、IWCはアメリカ海軍と海兵隊の全飛行隊の時計に取り組むことを許可された唯一の会社となっている。

“トップガン”モデルのケースバック。トップガンのロゴがあしらわれる。

「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41」は、このような背景の下でラインナップされているクロノグラフモデルだ。IWCのパイロットウォッチの伝統であるダイヤ型針がアイコンである。ケースサイドからなだらかにつながる太いラグや、グローブ着用時にも操作しやすいリュウズとプッシュボタン、広く取られた文字盤、ゴシック体で太く、大きく描かれたアラビア数字インデックスなどが、ツールウォッチらしい頑強なイメージを生み出す。

 センター時分針とクロノグラフ秒針に加え、3時位置にデイデイト表示、6時位置にスモールセコンド、9時位置に12時間積算計、12時位置に30分積算計を備え、基本的な測時に関する表示は網羅されていると言えるだろう。

 今般取り上げたRef.IW388101は、鮮やかかつシックな印象のブルー文字盤モデルで、スモールセコンド針は視認性を高めるためにレッドに彩られており、挿し色となっている。文字盤のサンレイ仕上げが表情の変化を生み出し、ホワイトの各種表示で視認性を確保しつつ、モダンでエレガントな印象にまとめられている。

 昨今はスーツスタイルにスポーティーなモデルを合わせるスタイルが広まりを見せており、ケース径41.0mm、厚さ14.5mmのサイズ感が許容できれば、IWCの高い外装品質や、本作のシックな印象が合わさり、ビジネスシーンにもマッチすることだろう。


セイコー未来技術遺産に登録された、

1978年(昭和53年)に発売されたセイコー クオーツ シャリオ Cal.5931が、国立科学博物館が認定する2024年度の重要科学技術史資料(通称、未来技術遺産)に登録された。ロレックス 時計 コピー 代金引換優良サイト 未来技術遺産とは、日本の科学技術の発展に寄与した重要な物品や技術の保存と継承を目的として2008年から始まった制度で、具体的には過去から現代にかけて開発された技術や製品、またその技術に関連する資料が将来の科学技術の研究や社会の発展にとって重要とされるものを指す。ロレックス 時計 コピー 代金引換優良サイト 未来技術遺産として認定されるためには、科学技術の進歩に顕著な貢献をした技術や製品であること、歴史的な意味や文化的な価値を持つものであること、そして現代および未来の技術発展にとって有用な知識や経験を提供するものであること、といった要件を満たしている必要がある。

選定に際しては、ロレックス時計コピー 代金引換優良サイト まず有識者による審査が行われ、科学技術史的な意義や保存の必要性を評価。認定されると、国立科学博物館がこれを保管し、公開展示や資料としての利用が行われることがある。未来技術遺産は、単なる“モノ”としてではなく、日本の技術的進化を象徴する遺産であり、未来の社会に役立つ資産としての意義を持つ。こうした資料を通じて、過去の技術革新がどのように現代の生活に影響を与えているかを学び、未来の技術開発に生かすことが期待されている。

 これまでにもセイコーの製品はいくつか登録されており、セイコー クオーツ シャリオ Cal.5931は、以下の製品に続いて同社では7点目の登録となる。これまでの登録製品は以下のとおりだ。

・2018年度:世界初のクォーツ式腕時計「セイコー クオーツ アストロン 35SQ」
・2019年度:世界初の6桁表示デジタルウオッチ「セイコー クオーツLC V.F.A. 06LC」
・2020年度:「スパイラル水晶時計 SPX-961」、「音声報時時計ピラミッドトーク DA571」、「 超超薄型掛時計 HS301」
・2021年度:ぜんまいで駆動し、クォーツで制御する世界初の腕時計「セイコー スプリングドライブ 7R68」


未来技術遺産に選ばれた理由

セイコー クオーツ シャリオ Cal.5931が選定された理由は、ずばりアナログクォーツウォッチの小型・薄型化および電池の長寿命化を支える“適応駆動制御”と呼ばれるシステムを初めて搭載した腕時計であったからだ。

 この適応駆動制御システムとは、針を動かすステップモーターの駆動パルス(信号)を複数種類持ち、モーターの回転ごとに時計の状態を判断して、最小の消費電力となるように切り替えるというもの。分かりやすく言えば、それまでアナログクォーツムーブメントにおける電力消費量の7~8割を占めていた、針を動かすためのステップモーターの電力消費量を従来の約半分に抑えることを可能にした画期的技術だった。その後、この制御システムはアナログクォーツウォッチに欠かすことのできない重要なコア技術のひとつと位置づけられ、現代においても改良を重ねながら用いられている。たとえば現行のGPSソーラーウォッチをはじめとするセイコーのアナログクォーツムーブメントにも、この適応駆動制御システムが組み込まれているほどである。


セイコー クオーツ シャリオとは?

セイコー クオーツ シャリオは、かつて存在したシャリオコレクションに属するバリエーションだ。男性向けの薄型ドレスウォッチとして誕生したコレクションで、当初は手巻きや自動巻きモデルもあり、クォーツモデルはそのひとつだった。セイコー クオーツ シャリオの名が確認できる公式な資料は、1974年の『セイコーウオッチカタログ vol.2(販売店向けの製品カタログ)』から。そして1978年に製作されたとされるトップ写真モデルのカラーバリエーション(Ref.CGX021)は、1980年のカタログでその存在を確認できる。

 だが、実は1971年こそがシャリオコレクションの原点であろう。というのも、1971年の『セイコーセールス 10月号/No.160(セイコーの製品ラインナップや技術情報を消費者や販売代理店に伝えるために発行していた小冊子)』の10月の新製品情報として“セイコー ドレスウオッチ 2220”発売のニュースが報じられている。これは手巻き式の薄型ドレスウォッチだったが、これこそがのちにセイコー シャリオとして分類されるコレクションの一部になったと考えられる。1971年時点ではまだシャリオの名は見られないが、1974年の『セイコーウオッチカタログ vol.2』では、まったく同じモデルが“セイコー ドレスウオッチ シャリオ”として紹介されているのだ。

 その一方、1960年代から1970年代前半にかけて、セイコーでは諏訪精工舎と第二精工舎が競うようにクォーツムーブメントを開発した。最初に販売にこぎつけたのは諏訪精工舎が開発したCal.35系(1969年)。これは世界最初のクォーツ式腕時計として販売されたセイコー クオーツ アストロン(Cal.35SQ)に搭載されたものだった。そして翌1970年には第二精工舎がCal.36系を発売する。しかしどちらも短命に終わり、製造の中心となったのは1971年登場のCal.38系(諏訪精工舎)と1972年登場のCal.39系(第二精工舎)だったが、Cal.39系は発光LEDを搭載するなど特殊であったため、コレクションの中心となったのはCal.38系であった。とはいえ、これらは基本的に精度を追求したもので厚みがあり、当時のトレンドであった薄型ドレスウォッチに向くムーブメントとは決して言えなかった。

 アナログクォーツウォッチの小型・薄型化は時代が求めたものだった。セイコーのデザイン史をまとめた「Seiko Design 140」によれば、1960年代当時の日本ではスーツ姿の会社員が増えたことでスーツに合う薄型時計が売れ筋となり、ゴールドフェザーなどの薄型機械式ドレスウォッチが人気を集めたそうだ(世界的に見ると、1950年代にはすでに薄型時計開発をメーカー各社で進めており、そうしたトレンドが日本でも顕在化し始めていた)。こうした当時の様子を背景に、クォーツウォッチにおいても早くから小型・薄型化が求められた。

 そんななか小型・薄型のクォーツウォッチとして市場に投入されたコレクションこそ、セイコー クオーツ シャリオだった。1974年にセイコー(当時の諏訪精工舎)は最大直径19.4mm、秒針なしの厚さで3.8mmというサイズを実現した小振りな量産クォーツムーブメントとしてCal.41を開発した。そしてセイコーはこのCal.41の派生系であるCal.4130を持ってクォーツのドレスウォッチを商品化し、分厚いクォーツではドレスウォッチは不可能という当時の常識を覆した。Cal.4130は世界最薄のクォーツムーブメント(当時)とされ、女性向けと思われる小振りなモデルに採用されたほか、男性向けのシャリオコレクションにもいち早く投入された。しかし当時の販売店向け製品カタログを見ても、クォーツの薄型ドレスウォッチのラインナップは決して多くはなかった。


第二精工舎が手がけた小型・薄型クォーツムーブメントCal.5931

前述のとおり、小型・薄型のクォーツウォッチ開発で1歩リードしていたのは諏訪精工舎だ。そんな最中に登場したセイコー クオーツ シャリオ Cal.5931(59系)は、待望のムーブメントだったに違いない。開発・製造を担ったのはクォーツウォッチ開発で先を行っていた諏訪精工舎ではなく、当時の第二精工舎だったのだ。

 Cal.59系ムーブメントの登場以降、セイコーのクォーツウォッチコレクションはトレンドも受けて一気に花開くこととなる。その理由は、未来技術遺産の選定理由にあるとおり。小型・薄型化が図られただけでなく電池の長寿命化も叶えることとなり、さまざまなデザイン、サイズ、シーンにふさわしいクォーツウォッチが数多く製造されるようになり、選択肢は大幅に拡充した。

 世界初のクォーツ式腕時計として登録されたセイコー クオーツ アストロン 35SQなどと比べると、その意義はやや分かりにくいかもしれない。だが、クォーツウォッチの普及に大きく貢献することとなったという意味では、Cal.59系ムーブメントは紛れもなく語り継ぐべき重要な技術遺産にふさわしいものと言えるだろう。

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