シチズン シリーズエイトから3つの限定モデルが登場

3つの新しいシリーズエイトの限定モデルは、夜の雪や夜明けのビルといった東京の街並みをダイヤルで表現しました。

シチズンは、同ブランドの代名詞である光発電のエコ・ドライブムーブメントとは対照的な存在である、機械式時計製造をテーマとしたシリーズエイトで3つの新しい限定モデルを発表し、秋の訪れを告げました。これらの新しいリファレンスは東京の街並みと、移りゆく光のムードを直接的に表現することで、そのテーマを前進させています。

Citizen Series8
シチズン シリーズエイト 880 メカニカル NB6035-55H。

 全3モデルはステンレススティール(SS)製のケースとブレスレットを使用しています。880 メカニカル(NB6035-55H)はグレーとイエローゴールドのめっきを施し、サイズは直径41.0mm×厚さ13.5mm。890 メカニカル(NB6060-58H)はSS、もう一方のモデル(NB6062-52P)はイエローゴールドカラーのめっきで、どちらもサイズは直径42.6mm×厚さ11.7mmです。シリーズエイト 890ラインの詳細についてはマークによる実機レビュー、またはジェームズによるGMTモデルのレビューをチェックしてください。

Citizen Series8
シチズン シリーズエイト 890 メカニカル NB6060-58H。

 880モデルのムーブメントには、独立して時針をジャンプさせることができるGMT機能(別名“フライヤーGMT”)付きのCal.9054が、890モデルにはCal.9051を搭載しています。どちらも自動巻きと手巻きの両方に対応し、秒針停止機能も備えており、シースルーバックからムーブメントを見ることができます。9054のパワーリザーブは50時間、9051は約42時間。防水性能は880が100m、890が200mで、シチズンがこれらの時計を都市での使用だけでなく、さまざまな場面で着用することを意図していることを示唆しています。

 ダイヤルデザインは、さまざまな日本の都市の景観をテーマにしています。880は雪の上に反射する街の光を思わせるホワイトからブラックへのグラデーションが特徴で、ベゼルとインデックスにはゴールドのアクセントを施しています。SS製の890は、夜明けのビルの影からインスピレーションを得た幾何学的なシルバーダイヤルが特徴であり、ゴールドめっきを施した890は、夜の街を表現した幾何学的なゴールドダイヤルを備えています。

Citizen Series8
シチズン シリーズエイト 890 メカニカル NB6062-52P。

 各モデルにはケース仕上げに合わせたSS製ブレスレットが付属します。880 メカニカル(NB6035-55H)は世界で1600本限定で、価格は24万2000円。890 メカニカルのSSのNB6060-58Hは19万8000円、イエローゴールドのめっきを施したNB6062-52Pは20万9000円(すべて税込)で、それぞれ1200本限定です。3モデルとも現在発売中で、詳細は以下で確認できます。

我々の考え
3つのなかで、私が最も引かれるのは880です。街の光に照らされたアスファルトに降る雪という、よりコンセプト的な表現を試みたシチズンの姿勢を評価しますし、ゴールドのアクセントが入ったグラデーションダイヤルは間違いなく個性を加えています。890のモデルはある意味でよりシンプルで普段使いを想像しやすく、そのなかでも“夜明け”をテーマにしたシルバーモデルは最も汎用性が高く控えめであり、そのモノクロームな外観が気に入っています。

Citizen Series8
 私が大胆にも提案できるとすれば、私の理想は880と890を組み合わせた、仮に885と呼ぶモデル。880のGMT機能と、よりモノクローム(そしてテクスチャーのある)な890のスタイルを組み合わせたいのです。現状では全体的に880が私の好みですが、シルバーの890が写真では最も魅力的です。それでもこれらは実際に手に取って見る必要がある類の時計であり、グラデーションダイヤルやゴールドのめっき仕上げは光の当たり方によって大きく印象が変わるでしょう。しかし全体として、特にこの価格帯において、これはシチズンからの強力なリリースだと思われます。

基本情報
ブランド: シチズン(Citizen)
モデル名: シチズン シリーズエイト 880 メカニカル& 890 メカニカル(Series 8 Limited Edition 880 & 890 Mechanical)
型番: NB6035-55H(880)/ NB6060-58H (890 SS)、 NB6062-52P (890 ゴールド)

直径: 41.0mm(880)/42.6mm(890)
厚さ: 13.5mm(880)/11.7mm(890)
ケース素材: グレーおよびイエローゴールドめっきを施したステンレススティール(880)/SS(890 SS)、イエローゴールドカラーめっきを施したSS(890 ゴールド)
文字盤色: ゴールドアクセントをあしらった、ホワイトからブラックへのグラデーション(880)/幾何学的なシルバー(890 SS)、幾何学的なゴールド(890 ゴールド)
インデックス: ケースのアクセントとしてマッチするアプライド
夜光: 針とインデックス
防水性能: 100m(880)、200m(890)
ストラップ/ブレスレット: ケース仕上げに合わせたSS製ブレスレット

ムーブメント情報
キャリバー: 9054(880)、9051(890)
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示、秒針停止機能、GMT機能(880のみ)
パワーリザーブ: 約50時間(880)、約42時間(890)
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24
クロノメーター認定: なし
追加情報: 日常のデバイスに対する耐磁性、シースルーバック

新しいツァイトヴェルク・ミニッツリピーター・ハニーゴールドを紹介させて欲しい。

まずはケースの素材から始めよう。ハニーゴールドはA.ランゲ&ゾーネの独自の合金だ。私が初めてこの素材を知ったのはWatches & Wondersの期間中だった。非常に長い夕食のあと、ジュネーブでのバスの後部座席で、同僚のジェームズ・ステイシーが自身の運命の時計(ハニーゴールドのランゲ1)について話してくれたのだ。その話に心を奪われたが、ひどい痛みとフロマージュのせいで気絶しそうだったため、それを脳のどこかに埋めてしまった。それからというもの、人々がこのハニーゴールドの名前を聖なる神であるかのように、神聖さを感じさせるような雰囲気で口々にしていたのを聞き続けた。数え切れないほどの漠然とした話題のなかで、独自の合金について話すのが大好きだが、ハニーゴールドは違うと感じた。本当にかけがえのないものだと思ったのだ(だじゃれを許して)。

 それから少し調べてみた。

A.ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター・ハニーゴールド
 ハニーゴールドは信じられないほどの耐久性を備え、ほかのどのゴールドよりもはるかに傷に強い。実際、プラチナよりも耐久性が高いため、加工が非常に難しくなっている。パラジウムの含有量が多いのではないかという憶測もあるが、ケンタッキーフライドチキンやコカ・コーラと同様、ブレンドレシピは秘密であるため、その全貌を知ることはできないだろう。

 特にチャイムウォッチを、さまざまな金属の音波特性で考えると興味深い。「プラチナはそれほど派手な音ではないが非常にきれいで、ピンクゴールドは暖かみがあり、ホワイトゴールドはより音量が大きい」と、製品開発ディレクターであり、熱心なドラマーでもあるアンソニー・デ・ハス(Anthony de Haas)氏は話す。「ハニーゴールドは密度の高さからプラチナのようなピュアな響きを奏でるが、プラチナよりわずかに暖かみがあります」。

 審美的にも、照明によって暖かくなったり冷たくなったりするのがハニーゴールドの魅力である。ローズよりも銅色が少なく、イエローよりも派手でないハニーゴールドは、A.ランゲ&ゾーネの美学に沿った繊細な輝きを放つ。

 このツァイトヴェルクは直径44.2mm、厚さ14.1mmだが、ランゲの複雑時計はデザイン的に大きいのではなく、理由がある上で大きいのだ。この時計のなかではいろいろなことが起きている。まず十進式ミニッツリピーターについて。これは4分の1単位ではなく、10分の1単位で作動している。なお同複雑機構はランゲではなく、はるか昔にムッシュ・ブレゲが発明したものである。10分刻みはデジタル表示に完璧にフィットする。読み取れる内容を正確に聞くことができるからだ。要するにこれはデジタルウォッチなのだ。例えば7時52分なら、低い音のゴングが7回、高い音のゴングが5回、さらに高い音のゴングが2回鳴るということだ。

A.ランゲ&ゾーネのムーブメント
 チャイムが鳴っているあいだは、数字ディスクの切り替え動作は遅れる。リピーターを叩いているあいだに新しい分になった場合、時分のジャンプはそのシーケンスが終了したときにのみ発生し、次の数字ディスクの切り替えサイクルは秒針が60秒のマークを通過したときに通常のタイミングで行われる。まるで魔法のような感じだ。

 この時計には、スライド式ではなくプッシュ式ボタンが採用されている。これにより、別個のバネにテンションをかけておくが必要なく、ゼンマイをツインバレルにすることで十分なエネルギーを得ることができる。またリピーターのシーケンスが途中で中断されたり、誤作動で時計が停止したりしないようにするために、残りのパワーリザーブが12時間を切ると、ハンマー打ち機構は作動しなくなる。それを示すのが12時位置のパワーリザーブインジケーター表示にある赤い点だ。

A.ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター・ハニーゴールドの瞬転数字式表示機構
 ハンマー打ち機構が作動していない場合、時計が完全に巻かれているときのパワーリザーブは約36時間だ。ハス氏によると、時計のチャイム音を12時59分(最も長い音のサイクルで鳴り終わるまで20秒かかる)で13回鳴らしても、12時間分のパワーリザーブは残るという。私にはこの計算がまったく理解できないが、彼の言葉を信じることにしよう。

我々の考え
ランゲ教団に新たに入教した者として、ツァイトヴェルク・ミニッツリピーターは明らかな興奮を覚える時計ではなかった。私の基準では、巨大で複雑な猛獣だ。しかし、気まぐれなものと産業的なものという完璧な二律背反をランゲ流に打ち出すという点では、遊び心がある。第1に、機械式デジタルウォッチというアイデアはまだ私が受け入れきれていないものだ。大きな開口部の窓は工業的な印象を与えるが、当初は躊躇していた。慣れるまでに多少時間がかかるのは、まあ、ほかにそのような例がないからだ。しかし私が何よりも評価しているのは、衝撃を与え、そして誘惑し、虜にするその能力である。

 結局のところ消化しにくいデザインだが、ただひとたび誰もが理解すれば、よろこびとなるようなデザインを推し進めることができる。(ジョン・)ガリアーノがヴェルサイユのオランジェリーで行った、1999年秋冬のクリスチャン・ディオールのクチュールショーのようなものだ。このショーは、会場にいたすべてのクチュールの観客に衝撃を与えた、ファッション史に残る革新的なショーとなった。これこそ真のクリエイティブの才能である。

A.ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター・ハニーゴールド
 ミニッツリピーターはあまり好きではない。もし50万ドルの余裕があったとしても、やはり私の手には負えないだろう。小さなハンマーの音を聞くたびに、私はWatch & WondersのPTSD(心的外傷後ストレス障害)になる。まるでパレクスポに音速でタイムスリップするようだ(私の意志に反して!)。しかしミニッツリピーターにはどこか古めかしい雰囲気があり、デジタル表示のツァイトヴェルクはそれに逆らっているように見える。この時計はデザインがとてもモダンで変わっているため、私はOKサインを出した。グレーの文字盤、Tシャツのような形をした“タイムブリッジ”、あまりクールでもなく暖かくもないハニーゴールド、ランゲのフォントなど、どれもバランスが取れていて、控えめで、私でも夢中になれる。鳴り終わるまで20秒かかる12時59分の打刻も待てるかも!

基本情報
ブランド: A.ランゲ&ゾーネ(A. Lange & Söhne)
モデル名: ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター・ハニーゴールド
型番: 147.050F

直径: 44.2mm
厚さ: 14.1mm
ケース素材: ハニーゴールド
文字盤: シルバー925、グレー(タイムブリッジはロジウム仕上げの洋銀製シルバー)
ストラップ/ブレスレット: 手縫いのダークブラウンレザーベルト、18Kハニーゴールド製と 18KWG製フォールディングバックル

A.ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター・ハニーゴールドに搭載された、Cal.L043.5
ムーブメント情報
キャリバー: L043.5
機能: 瞬転数字表示式時分表示・スモールセコンド(ストップセコンド)、パワーリザーブインジケーター、十進ミニッツリピーターを搭載したハンマー打ち機構
直径: 37.7mm
厚さ: 10.9mm
パワーリザーブ: 約36時間(完全巻き上げ状態で、ハンマー打ち機構が作動していない場合)
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8800振動/時
石数: 93
追加情報: コンスタントフォースエスケープメント

価格 & 発売時期
価格: 要問い合わせ
発売時期: 一部のA.ランゲ&ゾーネブティック
限定: あり、世界限定30本

ドイツの有名なカメラメーカーから発売された貴重な腕時計の、超限定バージョンだ。

ライカが新しいZM 11モデルを発表してからわずか数カ月後、ブランドはオリジナルのZM 1をベースにした最初のリミテッドモデルを正式ローンチした。新しいモデルはZM 1 ゴールド リミテッドエディションで、オリジナルのZM 1(以前のL 1)を踏襲しており、18Kレッドゴールド製ケースと、ブラウンのグラデーションダイヤルが特徴だ。

50本限定のZM 1 ゴールド リミテッドエディションは、オリジナルのZM 1の機能はそのままに、ケースとダイヤルを変更し、より温かみのある貴重なカラーリングに仕上げた、ブランドの最も熱心なファンのための特別なモデルだ。スタンダードモデルがブラック文字盤、赤のアクセント、スティールケースを備えているのに対し、ZM 1 ゴールドは特別な素材、特にゴールドとチタン(ムーブメントに使用)を使って表現する既存のライカ製品を再現している。

リューズとプッシャーはチタン製で、ZM 1 ゴールド リミテッドエディションはブラウンのアリゲーターに18KRGのデプロワイヤントクラスプが付いており、価格は2万8000ドル(日本円で約411万8000円)となっている。

我々の考え
ZM 1 ゴールド リミテッドエディションは、ゴールドとブラックのカラーバリエーションを施した1929年発表のカメラ、“IA Luxus”へのオマージュとして製作された。しかし時計製品という観点から見ると、ZM 1とZM 2が発売されたときには感動したものの、時計がカメラのM 11と同等かそれ以上の価格で販売されることに、僕は純粋に疑問を感じていた。さて、数カ月前にライカ本社でZM 1 ゴールドエディションを見たとき、僕はいくつかの数字(とカラスのプレート)も手に入れた。

結局のところ、ライカはZM 1とZM 2を合わせて年間約500本しか生産しておらず、そのうちの30%はライカ以外の顧客に販売される。ということは、ライカのカメラを持っていない人たちが購入しているということだ。これは特筆すべきことであり、このリミテッドエディションがZM 1と2の年間生産本数の約10%を占めていることを意味する。すでに同意している人から賛同を得ようとしているようなものだ。

時計のなかでも、ZM 1は非常に印象的なモデルだ。よくできていて、ライカのデザイン言語を踏襲し、カメラ関連のギミックを搭載しているが、それをまったく感じさせない。ケースと文字盤はデザインの顕著な表現であり、特に本当に特別なものを求めるライカコレクターのためのものである。とはいえ、ブラウン文字盤が僕の好みに合っているとは言えない。個人的にはやはりベゼルベースのGMT機能があるブラックとSSのZM 2を今でも気に入っているのだ。

主な争点は価格だろうが、SS製のZM 1がおよそ1万2000ドル(日本円で約176万6000円)という値段を考えると、このゴールドとチタン製リミテッドエディションのライカからの提示価格には驚かない。50本しかないし、通りすがりの人に提供するような商品でないことは間違いない。この種のライカ製品は、あらかじめ購入資格がある可能性が高く、その魅力はフォーマットと極めて限定された生産数にある。私がヴェッツラー(またしても賛同を得よう)にいたとき、私は少なくともふたりの深いライカコレクターと話をしたが、彼らはゴールド製ZM 1のリストに名前が載ったことをとてもよろこんでいた。

ZM 1、ZM 2が発売されてから(2022年春以降に発売)、極めて短期間で成功を収めたことを考えると(最近のZM 11によるライカウォッチファミリーの拡大は言うまでもない)、ZM 1 ゴールド リミテッドエディションはライカからの真っ当な試みであり、本質的にはブランドの最もアクティブなコレクターのための特別なモデルとして機能するように感じられるのだ。

基本情報
ブランド: ライカ(Leica)
モデル名: ZM 1 ゴールド リミテッドエディション(ZM 1 Gold Limited Edition)

直径: 41mm
厚さ: 14.5mm
ラグからラグまで: 48mm
ケース素材: 18Kレッドゴールド
文字盤: アルミニウム、グラデーションブラウン仕上げ、ゴールドアクセント
インデックス: ゴールドプレートとダイヤモンドカット
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: アリゲーターレザーストラップ、18KRG製ディプロワイヤントクラスプ

leica ZM 1 gold
ムーブメント情報
キャリバー: LH-1001
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示、パワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
追加情報: リューズプッシャーで時刻設定モードを起動

価格 & 発売時期
価格: 2万8000ドル(日本円で約411万8000円)
発売時期: 本日より世界各地のライカストアで販売
限定: あり、世界限定50本

偉大な時計メーカーの歴史をお伝えしよう。

今年はウルバン・ヤーゲンセンの誕生から250周年にあたる。現在ウルバン・ヤーゲンセンと呼ばれているブランド(あるいはそのブランド名の由来となったデンマーク人時計職人)についてよく知らない人にとっては、知識を得る絶好の機会である。今週開催される第18回ジュネーブ・オークションと並行して、フィリップスはヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)の貴重なコレクションによるヤーゲンセンの250年を祝した特別展を開催する。11月1日(水)から4日(土)まで、ジュネーブ郊外のラ レゼルヴで25を超えるコレクションが公開される。

 ヤーゲンセン一族によるウォッチメイキングの歴史は、18世紀のヨーゲン・ヤーゲンセン(Jørgen Jørgensen)の誕生によって始まる。彼はデンマークの職人たちによる金メッキ加工技術に、新しい理論と実践的な手法をもたらしたと言われている。やがて彼はドイツとスイスに渡った。ヨーゲンの長男であるウルバン・ヤーゲンセンが家名を継承し、一族のみならずデンマーク全土において最も名高い時計師となったのだ。彼はアブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)やフェルディナント・ベルトゥー(Ferdinand Berthoud)らから手ほどきを受け、生涯を通じて時計やマリンクロノメーターを製作していくことになる。

urban jurgensen desk watch chronometer
ジョン・アーノルド(John Arnold)によるスプリングデテント脱進機を備えた、ウルバン・ヤーゲンセンの1812年製デッキクロノメーター。8つのうちのひとつ。

 やがて、ヤーゲンセンの名は一族から消えていく。そこでピーター・ボームベルガー(Peter Baumberger)とデレク・プラット(Derek Pratt)が、かつての栄光を取り戻すことを目標にこの商標を取得したのである。ボームベルガーによる指揮のもと、プラットはマスターウォッチメーカーとしての卓越した技能を発揮し、息を吹き返したウルバン・ヤーゲンセンのために美しく複雑な時計の製作を開始した。

 その後2010 年にボームベルガーが悲劇的な死を遂げると、クロット博士がこのブランドを取得する。オークショニアとして活躍していたころからボームベルガーとプラットを知っていたクロット博士は、1980年代のウルバン・ヤーゲンセン初期の懐中時計を個人的に収集し始めた。そして最終的に、独立時計師のカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏がヤーゲンセンの看板を託されることになった(彼にインタビューした記事はこちら)。

the oval derek pratt urban jurgensen
デレク・プラットが手がけたヤーゲンセンのオーバル No.1。仕上げはヴティライネン氏による。このプラチナ製の懐中時計は、ワンミニット フライングトゥールビヨン、ルモントワール、コンスタントフォーススプリングデテントクロノメーター脱進機、ジャンピングセコンド、パワーリザーブインジケーター、温度計、ムーンフェイズを備えている。

 クロット博士は長年にわたってヤーゲンセンの時計を収集し続け、ヤーゲンセン家オリジナルの懐中時計と、プラットとボームベルガーによる現代的な作品の両方をコレクションしてきた。そして今回、フィリップスの協力を得て、彼のコレクションから27点を展示することになった。誤解のないように言っておくが、展示物はいずれも今年のジュネーブ・オークションに出品されるものではない(この週末のオークションでは、3点の異なるヤーゲンセンの時計が出品される)。これはヤーゲンセンの時計製造の250周年を記念した特別展示で、メーカーにとって最も重要なコレクターのひとりとその後援者が手がけたものである。

urban jurgensen derek pratt
2012年に製作されたウルバン・ヤーゲンセンのパイロットモデル。特許を取得したピボットデテントクロノメーター脱進器を搭載。

 フィリップスはジュネーブでの展示会と合わせて、クロット博士が執筆した詳細なブランドヒストリーを含む素晴らしいコレクションカタログを作成した。さらに、クロット博士がヤーゲンセンについて語った3部構成のインタビュービデオもある(こちらから確認できる)。時計、特にブランドの真の研究者であるクロット博士の協力のもと、ヤーゲンセンの時計とその歴史にまつわるおそらく最も包括的なカタログが完成した。

 これらはウォッチメイキングにおけるウルバン・ヤーゲンセンの名前の重みと、それが時計の世界に与え続けている影響について、私たちを啓蒙してくれる素晴らしい取り組みだ。

ドイツの有名なカメラメーカーから発売された貴重な腕時計の、超限定バージョンだ。

ライカが新しいZM 11モデルを発表してからわずか数カ月後、ブランドはオリジナルのZM 1をベースにした最初のリミテッドモデルを正式ローンチした。新しいモデルはZM 1 ゴールド リミテッドエディションで、オリジナルのZM 1(以前のL 1)を踏襲しており、18Kレッドゴールド製ケースと、ブラウンのグラデーションダイヤルが特徴だ。

50本限定のZM 1 ゴールド リミテッドエディションは、オリジナルのZM 1の機能はそのままに、ケースとダイヤルを変更し、より温かみのある貴重なカラーリングに仕上げた、ブランドの最も熱心なファンのための特別なモデルだ。スタンダードモデルがブラック文字盤、赤のアクセント、スティールケースを備えているのに対し、ZM 1 ゴールドは特別な素材、特にゴールドとチタン(ムーブメントに使用)を使って表現する既存のライカ製品を再現している。

リューズとプッシャーはチタン製で、ZM 1 ゴールド リミテッドエディションはブラウンのアリゲーターに18KRGのデプロワイヤントクラスプが付いており、価格は2万8000ドル(日本円で約411万8000円)となっている。

我々の考え
ZM 1 ゴールド リミテッドエディションは、ゴールドとブラックのカラーバリエーションを施した1929年発表のカメラ、“IA Luxus”へのオマージュとして製作された。しかし時計製品という観点から見ると、ZM 1とZM 2が発売されたときには感動したものの、時計がカメラのM 11と同等かそれ以上の価格で販売されることに、僕は純粋に疑問を感じていた。さて、数カ月前にライカ本社でZM 1 ゴールドエディションを見たとき、僕はいくつかの数字(とカラスのプレート)も手に入れた。

結局のところ、ライカはZM 1とZM 2を合わせて年間約500本しか生産しておらず、そのうちの30%はライカ以外の顧客に販売される。ということは、ライカのカメラを持っていない人たちが購入しているということだ。これは特筆すべきことであり、このリミテッドエディションがZM 1と2の年間生産本数の約10%を占めていることを意味する。すでに同意している人から賛同を得ようとしているようなものだ。

時計のなかでも、ZM 1は非常に印象的なモデルだ。よくできていて、ライカのデザイン言語を踏襲し、カメラ関連のギミックを搭載しているが、それをまったく感じさせない。ケースと文字盤はデザインの顕著な表現であり、特に本当に特別なものを求めるライカコレクターのためのものである。とはいえ、ブラウン文字盤が僕の好みに合っているとは言えない。個人的にはやはりベゼルベースのGMT機能があるブラックとSSのZM 2を今でも気に入っているのだ。

主な争点は価格だろうが、SS製のZM 1がおよそ1万2000ドル(日本円で約176万6000円)という値段を考えると、このゴールドとチタン製リミテッドエディションのライカからの提示価格には驚かない。50本しかないし、通りすがりの人に提供するような商品でないことは間違いない。この種のライカ製品は、あらかじめ購入資格がある可能性が高く、その魅力はフォーマットと極めて限定された生産数にある。私がヴェッツラー(またしても賛同を得よう)にいたとき、私は少なくともふたりの深いライカコレクターと話をしたが、彼らはゴールド製ZM 1のリストに名前が載ったことをとてもよろこんでいた。

ZM 1、ZM 2が発売されてから(2022年春以降に発売)、極めて短期間で成功を収めたことを考えると(最近のZM 11によるライカウォッチファミリーの拡大は言うまでもない)、ZM 1 ゴールド リミテッドエディションはライカからの真っ当な試みであり、本質的にはブランドの最もアクティブなコレクターのための特別なモデルとして機能するように感じられるのだ。

基本情報
ブランド: ライカ(Leica)
モデル名: ZM 1 ゴールド リミテッドエディション(ZM 1 Gold Limited Edition)

直径: 41mm
厚さ: 14.5mm
ラグからラグまで: 48mm
ケース素材: 18Kレッドゴールド
文字盤: アルミニウム、グラデーションブラウン仕上げ、ゴールドアクセント
インデックス: ゴールドプレートとダイヤモンドカット
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: アリゲーターレザーストラップ、18KRG製ディプロワイヤントクラスプ

leica ZM 1 gold
ムーブメント情報
キャリバー: LH-1001
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示、パワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
追加情報: リューズプッシャーで時刻設定モードを起動

価格 & 発売時期
価格: 2万8000ドル(日本円で約411万8000円)
発売時期: 本日より世界各地のライカストアで販売
限定: あり、世界限定50本

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